邱淑惠のコラム第4回「小林よしのりさんの台湾入国禁止に思う」

漫画家の小林よしのりさんが台湾のことを思って書いた「台湾論」というマンガが、台湾から批判を受けて入国禁止となってしまいました。
小林さんは善意で良かれと思っていたのが、どうして批判を受けるのかわからないようなのです。
台湾は、昔から台湾に住んでいた台湾人(本省人)と蒋介石一派が毛沢東に追われて、中国大陸から台湾に逃れてきた外省人とがあります。
皆さんがご存じのように、台湾は最近まで外省人が国の政治の中枢を占めていました。これに反発する台湾人(本省人)も少なくありませんでした。ですから台湾人の中には、戦争中の日本による植民地時代の方が、蒋介石支配よりもマシだったと思う人もいます。
しかし、台湾にしてみれば日本の植民地時代は良いこともありましたが、支配されていましたので自由などが制限されていたなどの悪い面も当然ありました。
その支配者であった日本人の小林さんから「蒋介石時代よりも日本植民地時代の方が良かったではないか」という意見は、台湾の人々にとってみれば「言われたくない」というのが率直な気持ちなのです。
どんな政策でも、利益を受ける人と損をする人や、喜ぶ人と悲しむ人が出てきます。
また人間とは、過ぎ去った過去は自分たちの都合の良いように解釈しがちです。そして、現実を批判するものです。
日本人の多くは、自ら犯した罪はすぐに忘れてしまうという癖があるように思えてなりません。しかし、植民地支配された他の民族は、その時に受けた傷は決して忘れることはないのです。
小林さんは、日本の植民地政策が良い面と悪い面の両方あるにも関わらず、その一面だけを捉えて中国人のプライドとメンツを十分に配慮しなかったことから、台湾から入国禁止という反発を受けることになったわけです。
ですから、こうした感情を小林さんがもう少し配慮してくれたら、このような事態は起こらなかったと思います。
私は「SAPIO」をときどき読んでいます。私は小林さんのファンの一人として、そして台湾人(本省人)として、今回の事件はとても残念でなりません。 <つづく>




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