連載「ダイエットについて考える」第3回

「過激なダイエットの裏にひそむ拒食症の危険性」


○死に至る病「拒食症」の増加
最近は、若い女性だけではなく男性の間にも拒食症が拡がってきていると言われています。
現代病といわれ世界的にも増加していて、からだと心の病である「拒食症」。極度の食欲不振によって、体重が20〜30キロにもダウンするといったような痩せ症状を示すのが特徴で、正式には「神経性食欲不振症」と呼ばれています。体が衰弱したり、無気力感におそわれるだけでなく、命を落とす危険性をもはらんだ恐ろしい病気なのです。
少し前の話ですが、拒食症によって1983年に世界的に有名な兄妹シンガー・グループの"カーペンターズ"の妹カレンの死が大きく報じられ、大きな話題となりました。しかし、これはほんの氷山の一角に過ぎず、実際は拒食症で命を落とす人は少なくないようです。
つい先だっても、私の近所に住む若い女性が拒食症と診断されて、治療の甲斐なく亡くなられたという話を耳にしました。"なぜ、あの人が"と思うほどのとてもスタイルのいいキレイな方にも関わらず、です。
では、なぜこれほど恐ろしい拒食症が増え続けているのでしょうか。
拒食症を引き起こす一因に、ダイエットが挙げられます。つまり、「やせたい」という気持ちが引き金になっているのです。それだけに拒食症は、誰にでも起こりうる危険性をはらんだ病気であるといえるのではないでしょうか。

○拒食症を招く危険なダイエット
一般に拒食症は、"ものを食べない拒食の状態"と、逆に"ものを食べまくる過食の状態"が繰り返されて進行するケースがほとんどです。
拒食症に陥った人の体験談を読むと、ダイエット経験者ならばとても他人事とは思えない身近さを感じる方が多いのではないでしょうか。
例えば、早くやせたいという気持ちからハードなダイエットを始めます。絶食ダイエットやビタミン剤中心の食生活を送るダイエット、あるいは「1週間で○キロやせる」といった、いかにも怪しげなダイエットに取り組むわけです。
努力の甲斐あってやせたとしても、ハードであればあるほど、その反動も大きなものになってはね返ってきてしまいます。食べ物を食べないといった禁断症状が続いていた反動で、モーレツに食べまくるといった状態に陥る場合が多いようです。その結果、当然体重は増えて太ってしまいます。そうなると食べ過ぎたことに後悔して、太った自分がイヤになり、そこでまたハードなダイエットに走り、効果が薄いとより過激なダイエットに走ってしまう―このような<ダイエット>→<モーレツ食い>→<ダイエット>を繰り返すうちに、より過激なダイエットへとエスカレートしていくのです。まさにこれが、拒食症の始まりなのです。
やがて、吐いては食べまくるようになります。そして、<冷蔵庫をカラにするほど、あるいは食べ過ぎて一歩も動けなくなるほど手当たり次第に食べ続けては、喉に手を突っ込んではゲーゲー吐いてしまう>→<自己嫌悪にかられても自分でコントロールできないのでやめられない>→<体重が極端に減り生理が止まって体が衰弱する>→<食物を拒否する>結果、拒食症になってしまうのです。
いってみれば、からだをいじめていじめぬく状態に陥ってしまうのが拒食症という病気なのです。まさに、体をいじめるダイエットが拒食症を生むのです。

○カラだのメカニズムに逆らってはならない
最後に「吐く」という行為について考えてみましょう。 以前、ダイエットを始めたばかりだという主婦が「私の方法は食べても平気なの。だって、吐けばいいから。」と屈託なく口にするのを耳にして、腰を抜かすほど驚いたことがあります。この言葉を聞いたとき、背筋が寒くなるような思いをしました。
手っ取り早いダイエット法として、手軽に食べたら「吐く」という方法に飛びつく人がいるようですが、本来「吐く」という行為は、異物や害のあるものを飲み込んでしまったとき、あるいはからだの調子が悪いときにからだがみせる反応です。つまり、緊急事態にからだが起こす一種の拒否反応なのです。
何の問題もないのに無理に嘔吐したり、嘔吐を繰り返せば、私たちの微妙なからだのメカニズムが狂ってきてしまいます。また、胃酸で歯をボロボロにしてしまうことにもなりかねません。
「下剤をかける」といった安易な方法をとる人もいるようですが、これにしても同様のことが言え、からだの仕組みを狂わせる原因になります。こうした方々もやはり、拒食症予備軍なのです。
私たちの自然なからだの営みを破壊するような過激なダイエット法は、結局、高い代償を支払わなければならないのです。 <つづく>





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